保険で良い入れ歯を作ってほしいです。
私も、保険でかなうものであれば、保険で作って差し上げたいと思っています。しかしながら、保険と自費の最も大きな違いは、材料の良し悪しはもちろんですが、
- 技術力の違いと
- 診療にかけられる時間と、
- 計画的なお口全体の管理を対象にした診療
なのです。
入れ歯治療は、総合的、かつ高度な治療技術が要求されます。入れ歯の作り方は歯科大学で習いますので、どの歯科医も「それなりに」入れ歯を作る技術は持っています。歯科医になってからどの技術を磨いていくかは人それぞれで、私は、入れ歯の技術を磨き、習得する道を選びました。
患者様に知っていただきたいと思うのは、良い入れ歯を作るには、とても高度な技術と時間が歯科医と歯科技工士に要求されるということです。技術と時間がかかるということは、費用がかかるということでもあります。
平成21年1月30日の朝日新聞に水口教授がコメントしていました。(以下、記事抜粋)
「保険診療でもしっかりした総入れ歯を作ってくれる歯科医もいるが、採算を度外視せざるをえない。手間をかけても採算が取れるような医療保険制度にすることが望ましいのだが・・・」
同新聞には、元日本歯科大学教授、稲葉繁先生もコメントされています。
「保険では歯科医の技術評価が低すぎ、きちんとした入れ歯が作れない・・・」
あなたもご存知の通り、日本の医療は保険医療が主体です。風邪をひいて内科を受診するのに、お金の心配をしながら受診される方は稀でしょう。ある意味、世界に誇れるシステムかもしれません。
しかし、歯科では、内科のように診断と投薬だけでは済みません。ほぼすべての処置が、手間と時間をかける繊細な修復処置であり、特に入れ歯の場合には、オーダーメードの義歯を製作するという治療内容です。歯科医療の現場からお話すれば、保険の制約のなかで、患者さんの満足を得られ、かつ世界の医療水準に恥じない内容の医療を提供する事は不可能、と言っても過言ではありません。
日本の保険制度がもっともっと改善してくれることを願っていますが、現状の制約の中で保険で合わない入れ歯を患者様に使っていただくことよりも、自費で患者様の人生がまた輝きだすような入れ歯を作ることを私は選びました。何卒ご理解、ご了承いただければと思います。